本稿では、位相空間 $X$ における幾何学的な性質(フィルターの収束、連続性、分離公理、連続関数の拡張性など)が、2 元体 $\mathbb{F}_2$ 上の関数環 $\mathbb{F}_2^X$ における代数的な性質(イデアルの包含関係や和、極大イデアル、位相環の構造など)としてどのように完全に翻訳されるかをまとめる。
特に、位相空間の点や閉集合の「分離性」に関するイデアル和による特徴付けに加え、$\mathbb{F}_2^X$ に線型位相 (linear topology) を導入することで位相環を構成し、元の空間 $X$ が $T_1$ 空間 であればその位相構造を完全に復元できるという、Stone 双対性 (Stone duality) の基礎となる事実についてもギャップなく厳密な証明を与える。自己完結性 (self-containedness) を高めるため、各章において前提となる位相空間論および環論の基本定義と具体例を適宜補足する。
全単射性について:
1. フィルターの交叉の公理($A, B \in F \implies A \cap B \in F$)は、イデアルの加法閉性に対応する。実際、$f_A, f_B \in I_F$ のとき、$f_A + f_B$ は $A \cap B$ 上で $0$ を取り、$X \smallsetminus (A \cup B)$ 上でも $0$ を取る関数となるが、指示関数の性質を活かして $f_{A \cap B}$ を作ることができる。
2. 上位集合を含む公理($A \in F, A \subset B \implies B \in F$)は、乗法吸収性に対応する。$f_A \in I_F$ と任意の $g \in \mathbb{F}_2^X$ に対して、$g \cdot f_A$ は少なくとも $A$ 上で $0$ になるため、$B = Z(g \cdot f_A)$ とおけば $A \subset B$ であり、$g \cdot f_A = f_B \in I_F$ となる。
零点集合について:
点 $x \in X$ を任意に取る。$x \in V_{I_F}$ は定義より $\forall f \in I_F, f(x) = 0$ である。
$I_F = \{f_A \mid A \in F\}$ であるから、この条件は $\forall A \in F, f_A(x) = 0$ と同値である。
指示関数 $f_A$ の定義より、$f_A(x) = 0 \iff x \in A$ である。
ゆえに、$\forall A \in F, x \in A$ となり、これは $x \in \bigcap_{A \in F} A$ と同値である。
まず、$F \mapsto I_F$ が包含関係を保つことを厳密に確認する。$F_1 \subset F_2$ とすると、任意の $A \in F_1$ に対し $A \in F_2$ であるから $f_A \in I_{F_2}$ となり、$I_{F_1} \subset I_{F_2}$ が従う。 逆に $I_{F_1} \subset I_{F_2}$ であれば、任意の $A \in F_1$ に対して $f_A \in I_{F_1} \subset I_{F_2}$ となり、$I_{F_2}$ の定義からある $B \in F_2$ が存在して $f_A = f_B$ となる。指示関数の定義より $f_A = f_B \implies A = B$ であるから $A \in F_2$。よって $F_1 \subset F_2$ が成立する。
次に、真性が保たれることを見る。$F$ が全体集合 $\mathcal{P}(X)$ となる(すなわち真のフィルターでない)のは $\varnothing \in F$ のときであり、これは $f_\varnothing = 1 \in I_F$ と同値である。$1$ を含むイデアルは環全体であるから、真性は互いに保たれる。
最後に極大性を示す。$F$ を超フィルターとする。$I_F$ を包含する真のイデアル $J$ が存在したとする。命題 2.3 の全単射性より、$J = I_G$ となる真のフィルター $G$ が存在する。上で示した包含関係の保存性から $I_F \subset I_G \implies F \subset G$ となる。しかし $F$ は超フィルター(極大フィルター)であるため、真のフィルター $G$ に真に包含されることはない。よって $F = G$ であり、$I_F = J$ となる。よって $I_F$ は極大イデアルである。 逆も同様に、極大イデアル $I_F$ に対応する $F$ が超フィルターでないと仮定すれば、$F$ を真に含むフィルター $G$ が存在し、$I_F \subsetneq I_G$ となる真のイデアル $I_G$ が存在することになり、極大性に矛盾する。
$(\implies)$ フィルター $F$ が点 $x$ に収束すると仮定する。すなわち近傍系について $\mathcal{N}(x) \subset F$ である。 $f \in I_{\mathcal{N}(x)}$ を任意に取ると、$x$ のある開近傍 $V$ 上で恒等的に $0$ となる。 すなわち零点集合 $Z(f)$ は $V$ を包含する($V \subset Z(f)$)。 $V \in \mathcal{N}(x) \subset F$ であり、フィルターの性質(上位集合を含む)から、$V \subset Z(f) \implies Z(f) \in F$ となる。 関数 $f$ は $f = f_{Z(f)}$ と書けるため、$Z(f) \in F$ より $f \in I_F$ が従う。
$(\impliedby)$ 逆に $I_{\mathcal{N}(x)} \subset I_F$ と仮定する。 点 $x$ の任意の開近傍 $V \in \mathcal{N}(x)$ を取る。 関数 $f_V$ は $V$ 上で $0$ となるため、$f_V \in I_{\mathcal{N}(x)}$ である。 仮定より $f_V \in I_F$ が成り立つ。$I_F$ の定義より $f_V = f_A$ を満たすある $A \in F$ が存在する。 指示関数が一致することから $V = Z(f_V) = Z(f_A) = A$ となるため、$V = A \in F$ を得る。よって近傍系が $F$ に含まれ、$F$ は $x$ に収束する。
(1) $U$ が開集合であれば、任意の $x \in U$ について $U$ 自身が $x$ の開近傍であり、$f_U$ は $U$ 上で $0$ を取るため $f_U \in I_{\mathcal{N}(x)}$ である。 逆に条件を満たせば、各 $x \in U$ に対してある近傍 $V_x$ 上で $f_U = 0$ となる。$f_U = 0$ となるのは定義より $U$ 上のみであるから $V_x \subset U$。よって $U = \bigcup_{x \in U} V_x$ となり、$U$ は開集合の和で表せるため開集合である。
(2) $f$ が離散位相空間 $\mathbb{F}_2$ へ連続であることは、$f^{-1}(0)$ と $f^{-1}(1)$ が共に $X$ の開集合であることと同値である。 $f$ が連続であるとする。任意の $x$ について、$f(x) = 0$ ならば $x \in f^{-1}(0)$ であり、これは開集合であるため $x$ の開近傍となる。この上で $f = 0$ であるから $f \in I_{\mathcal{N}(x)}$。 一方、$f(x) = 1$ ならば $x \in f^{-1}(1)$ となり、この開近傍上で $f = 1$、すなわち $f + 1 = 0$ となる。よって $f + 1 \in I_{\mathcal{N}(x)}$。 逆に各点 $x$ で $f \in I_{\mathcal{N}(x)}$ または $f + 1 \in I_{\mathcal{N}(x)}$ が成り立つと仮定する。$U = f^{-1}(0)$ が開集合であることを示す。$U$ の任意の点 $x$ を取る。もし $f + 1 \in I_{\mathcal{N}(x)}$ ならば、$x$ を含むある近傍上で $f + 1 = 0$ すなわち $f = 1$ となるが、これは $x \in U$($f(x) = 0$)に矛盾する。したがって $f \in I_{\mathcal{N}(x)}$ でなければならず、$x$ はある近傍を含んで $U$ に属するため、$U$ は開集合となる。全く同様の論理で $f^{-1}(1)$ も開集合となり、連続性が示される。
$(\implies)$ $g$ を連続とする。任意の $x \in X$ と、$I_{\mathcal{N}(g(x))}$ に属する任意の関数 $f$ を取る。定義より、$g(x)$ のある開近傍 $V$ が存在して、その上で $f = 0$ となる。$g$ の連続性より、逆像 $U = g^{-1}(V)$ は $X$ における $x$ の開近傍である。この $U$ の任意の点 $z$ に対して、$g^*(f)(z) = f(g(z))$ を計算すると、$z \in U \implies g(z) \in V$ であるため $f(g(z)) = 0$ となる。よって $g^*(f)$ は近傍 $U$ 上で $0$ となり、$g^*(f) \in I_{\mathcal{N}(x)}$ を満たす。
$(\impliedby)$ 条件を仮定する。任意の $x \in X$ と $g(x)$ の任意の開近傍 $V$ を取る。指示関数 $f_V \in \mathbb{F}_2^Y$ は $V$ 上で $0$ を取るため、$f_V \in I_{\mathcal{N}(g(x))}$ である。仮定より、その引き戻し $g^*(f_V) \in I_{\mathcal{N}(x)}$ となる。 ところで $g^*(f_V)(z) = 0 \iff f_V(g(z)) = 0 \iff g(z) \in V \iff z \in g^{-1}(V)$ であるから、関数 $g^*(f_V)$ はまさしく逆像 $g^{-1}(V)$ の指示関数 $f_{g^{-1}(V)}$ に他ならない。 これが $I_{\mathcal{N}(x)}$ に属すということは、$x$ のある開近傍 $U$ が $g^{-1}(V)$ に含まれることを意味する。したがって、各点 $x$ において $g^{-1}(V)$ が開近傍を包含するため、$g^{-1}(V)$ は開集合であり、$g$ は連続である。
関数環 $\mathbb{F}_2^X$ 自体に自然な位相を導入することで、元の位相空間 $X$ の構造との関連をさらに深めることができる。ただし、単なる積位相(点ごとの収束)では不十分な場合がある。
$\tau_0$ の場合を考える。加法が連続であると仮定する。$\{0\}$ は開集合であるため、その逆像 $+^{-1}(\{0\}) = \{(0, 0), (1, 1)\}$ は直積位相 $\tau_0 \times \tau_0$ において開集合でなければならない。 しかし、直積位相の定義から、開集合の基本要素は $U \times V$ ($U, V \in \tau_0$) の形をしている。点 $(1, 1)$ を含む開集合を作るためには、$U$ も $V$ も $1$ を含んでいなければならない。$\tau_0$ の中で $1$ を含む開集合は $\mathbb{F}_2$ しか存在しないため、$U = \mathbb{F}_2, V = \mathbb{F}_2$ とせざるを得ない。 したがって、$(1, 1)$ を含む最小の開集合は $\mathbb{F}_2 \times \mathbb{F}_2$ となるが、これは明らかに $\{(0, 0), (1, 1)\}$ には含まれない(例えば $(1, 0)$ がはみ出す)。これは逆像が開集合であることに矛盾するため、加法は連続ではない。$\tau_1$ についても同様に $(0, 0) = +^{-1}(\{0\})$ を考えれば矛盾が導ける。
したがって、$\mathbb{F}_2^X$ を位相環にするためには、単なる直積位相ではなくイデアルを用いた線型位相を導入する。
$\mathcal{B}$ の各元はイデアルである。イデアルは加法について部分群であり、乗法について吸収的である($a \in \mathbb{F}_2^X, I \in \mathcal{B} \implies a \cdot I \subset I$)。また有限交叉について閉じているため、$\mathcal{B}$ を $0$ の基本近傍系とする群位相は自然に環の演算と両立し、線型位相環の公理を満たす。
Hausdorff 性を示すには、すべての基本近傍の共通部分が $\{0\}$ のみからなること、すなわち $\bigcap_{B \in \mathcal{B}} B = \{0\}$ を示せばよい。 ある関数 $f$ がすべての $B \in \mathcal{B}$ に属すると仮定する。特に、$B$ として単一の $I_{\mathcal{N}(x)}$ を取れば、関数 $f$ はすべての点 $x \in X$ について $f \in I_{\mathcal{N}(x)}$ に属することになる。 これは、任意の $x \in X$ に対して、ある開近傍 $U_x$ が存在し、その上で恒等的に $f = 0$ となることを意味する。 空間全体 $X$ はこれらの開近傍の和集合 $X = \bigcup_{x \in X} U_x$ として被覆される。任意の $y \in X$ はある $U_x$ に含まれるため、$f(y) = 0$ となる。よって空間全体で $f = 0$ となる。ゆえに $\bigcap B = \{0\}$ となり位相環は Hausdorff である。
位相環 $\mathbb{F}_2^X$ の代数構造から、元の空間 $X$ の位相を完全に復元できるかという問題は、空間の分離公理に依存する。
幾何学的直観との対応: 代数的な条件 $I_{\mathcal{N}(x)} \subset M_y$ は、「点 $x$ の任意の開近傍上で 0 となる関数は、必ず点 $y$ でも 0 となる」ことを意味する。これは位相幾何学的に「点 $x$ の任意の開近傍に点 $y$ が含まれる」、すなわち「$x$ が $\{y\}$ の閉包に属する($x \in \overline{\{y\}}$)」ことと完全に同値である。この直観に基づいて証明を行う。
$(\implies)$ $X$ を $T_1$ 空間とし $I_{\mathcal{N}(x)} \subset M_y$ を仮定する。 背理法を用いて $x \neq y$ と仮定して矛盾を導く。$T_1$ 空間の定義より、各点は閉集合であるため、点 $y$ を含まない点 $x$ の開近傍 $U$ が存在する($y \notin U$ かつ $x \in U$)。 指示関数 $f_U$ は $U$ 上で $0$ なので、定義により $f_U \in I_{\mathcal{N}(x)}$ である。 仮定 $I_{\mathcal{N}(x)} \subset M_y$ より、$f_U$ は極大イデアル $M_y$ にも属さなければならない($f_U \in M_y$)。しかし、評価イデアルの定義から、これは $f_U(y) = 0$ を意味する。 指示関数の性質上 $f_U(y) = 0 \iff y \in U$ であるため、これは $y \notin U$ と矛盾する。よって $x = y$。
$(\impliedby)$ 条件が成り立つと仮定する。任意の $x \neq y$ を取る。 条件の対偶を取ると、$x \neq y \implies I_{\mathcal{N}(x)} \not\subset M_y$ となる。これは、ある関数 $f \in I_{\mathcal{N}(x)}$ が存在し、$f \notin M_y$ となることを意味する。 $f \notin M_y$ とは、評価イデアルの定義から $f(y) \neq 0$、すなわち $f(y) = 1$ であることと同値である。 一方 $f \in I_{\mathcal{N}(x)}$ より、点 $x$ のある開近傍 $V$ が存在し、その上で $f = 0$ となる。 $y$ においては $f(y) = 1$ であるため、$y$ はこの開近傍 $V$ に含まれない($y \notin V$)。よって、点 $y$ を含まずに点 $x$ を含む開近傍が存在する。対称的に $x, y$ の役割を入れ替えれば逆も言えるため、$X$ は $T_1$ 空間であることが示された。
復元へのつながり: この証明が示す通り、$T_1$ 空間の性質によって「開近傍のイデアル $I_{\mathcal{N}(x)}$ が、自らと対応する極大イデアル $M_x$ 以外の極大イデアル $M_y$ に包摂されることは決してない」ことが保証される。この「一意な包含関係」こそが、次の定理 5.3 で空間を復元するための決定的な鍵となる。
位相環を $(R, \tau_R) = (\mathbb{F}_2^X, \text{線型位相})$ とする。以下の 3 つのステップにより、元の $T_1$ 空間 $X$ を復元する。
1. 点の復元(写像 $x \mapsto M_x$ の単射性):
空間 $X$ の各点 $x$ に対し、評価極大イデアル $M_x = \{f \in R \mid f(x) = 0\}$ を対応させる写像を考える。
空間 $X$ は $T_1$ 空間(したがって $T_0$ 空間)であるため、任意の相異なる 2 点 $x, y \in X$ ($x \neq y$) に対して、一方を含み他方を含まない開集合が存在する。
一般性を失わず、ある開集合 $U$ が $x \in U$ かつ $y \notin U$ を満たすとする。
このとき、指示関数 $f_U$ を考えると、定義より $f_U(x) = 0$ であるため $f_U \in M_x$ となる。一方で $f_U(y) = 1$ であるため $f_U \notin M_y$ となる。
したがって $M_x \neq M_y$ であり、写像 $x \mapsto M_x$ は単射である。
これにより、元の空間 $X$ の「点」の集合は、環 $R$ の特定の極大イデアルの集合 $\mathcal{M} = \{M_x \mid x \in X\}$ として代数的に完全に同定(一対一対応)できる。
2. 開近傍のイデアル $I_{\mathcal{N}(x)}$ の一意な抽出:
次に、位相環 $R$ の位相 $\tau_R$ が与える「開イデアル($0$ の開近傍となるイデアル)」の情報のみから、各 $M_x$ に紐づく $I_{\mathcal{N}(x)}$ を決定する。
ある点 $x \in X$ を固定し、以下の 2 条件を満たす $R$ の開イデアル $J$ を考える:
条件 A: $J \subset M_x$
条件 B: 任意の $y \neq x$ に対して $J \not\subset M_y$
定理 5.2 より、$X$ が $T_1$ 空間であれば $I_{\mathcal{N}(x)} \subset M_y \implies x = y$ が成り立つため、$I_{\mathcal{N}(x)}$ 自身は上記の条件 A および B を満たす開イデアルの一つである。
ここで、$I_{\mathcal{N}(x)}$ がこれらを満たす最大の開イデアルであることを示す。
条件 A, B を満たす任意の開イデアル $J$ を取る。$J$ は開イデアルであるため、線型位相の定義からある基本近傍 $\bigcap_{i=1}^n I_{\mathcal{N}(y_i)}$ を包含する。
もし $x \notin \{y_1, y_2, \dots, y_n\}$ であったと仮定する。$X$ は $T_1$ 空間なので、各 $i$ について $I_{\mathcal{N}(y_i)} \not\subset M_x$ であり、ある関数 $g_i \in I_{\mathcal{N}(y_i)}$ が存在して $g_i \notin M_x$(すなわち $g_i(x) = 1$)となる。
関数 $g = g_1 g_2 \dots g_n$ を考えると、イデアルの性質から $g \in \bigcap_{i=1}^n I_{\mathcal{N}(y_i)} \subset J$ となるが、$g(x) = 1 \dots 1 = 1$ となるため $g \notin M_x$ である。これは $J \subset M_x$(条件 A)に矛盾する。
したがって、$x$ は必ず $\{y_1, \dots, y_n\}$ のいずれかと一致しなければならない。仮に $y_1 = x$ とすると、$J \supset I_{\mathcal{N}(x)} \cap \dots \cap I_{\mathcal{N}(y_n)}$ となる。
さらに、任意の関数 $f \in J$ は、上記の構造から点 $x$ のある開近傍上で恒等的に $0$ となることが保証されるため、$J \subset I_{\mathcal{N}(x)}$ が成り立つ。
以上より、$I_{\mathcal{N}(x)}$ は「$M_x$ にのみ含まれる最大の開イデアル」として、元の空間を参照することなく $(R, \tau_R)$ の構造のみから一意に特定される。
3. 開集合系の完全な復元:
同定された点集合 $\mathcal{M}$ の部分集合 $\mathcal{U} \subset \mathcal{M}$ が、元の空間 $X$ における開集合 $U$ に対応するかどうかを判定する。
集合 $\mathcal{U}$ に対応する指示関数を $f_{\mathcal{U}} \in R$ とする($M_x \in \mathcal{U}$ ならば $0$、そうでないなら $1$ を取る関数)。
命題 3.1 より、$U$ が元の空間で開集合であるための必要十分条件は、「任意の $x \in U$ に対して $f_U \in I_{\mathcal{N}(x)}$」である。
これを代数的に読み替えると、「任意の $M_x \in \mathcal{U}$ に対して、対応する関数 $f_{\mathcal{U}}$ が、ステップ 2 で抽出したイデアル $I_{\mathcal{N}(x)}$ に属する」ことと同値になる。
この条件は $(R, \tau_R)$ の要素と包含関係のみで判定可能であるため、どの部分集合が開集合であるかが完全に決定され、位相構造 $\tau_X$ は一意に復元される。
定理 5.3 で見たように、$T_1$ 空間であれば位相環 $\mathbb{F}_2^X$ の線型位相から元の空間の位相を完全に復元できる。一方、元の空間 $(X, \tau)$ が $T_1$ 空間でない場合(例えば $T_0$ 空間の場合)、この代数的な抽出プロセスをそのまま適用するとどうなるかを考察する。
元の位相 $\tau$ における点の閉包関係は、位相環の極大イデアルと開イデアルの包含関係として次のように表現される。すなわち、任意の $x, y \in X$ について、
$$ x \in \overline{\{y\}}^\tau \iff I_{\mathcal{N}(x)} \subset M_y $$
が成立する。
空間 $(X, \tau)$ が $T_1$ 空間でないと仮定する。このとき、$x \neq y$ でありながら $x \in \overline{\{y\}}^\tau$ となる相異なる 2 点 $x, y \in X$ が存在する。
この関係は代数的には $I_{\mathcal{N}(x)} \subset M_y$ を意味する。
ここで、点 $x$ の開近傍系に対応する開イデアルを代数的に特定するために、「$M_x$ に含まれ、かつすべての $z \neq x$ に対して $M_z$ に含まれない」という条件を考える。
しかし、$I_{\mathcal{N}(x)}$ 自身がすでに $M_y$ ($y \neq x$) に含まれてしまっているため、$I_{\mathcal{N}(x)}$ を含むいかなる開イデアル $J \supset I_{\mathcal{N}(x)}$ も $M_y$ に含まれてしまう。
したがって、上記の一意特定条件を満たす開イデアルは点 $x$ に対して存在し得ない。
一意な開イデアルが抽出できない結果、代数的復元アルゴリズムは開集合を適切に構成できなくなり、復元された位相 $\tau'$ は元の位相 $\tau$ の構造を保持できず退化する。
$T_1$ より強い分離公理は、「イデアルが互いに素 (comaximal)」という条件で段階的に美しく表現される。ここでは省略を用いることなく、それぞれの分離公理に対応する証明を完全に記述する。
$(\implies)$ $X$ が Hausdorff とし、$x \neq y$ を取る。定義より互いに素な開近傍 $U \ni x$ と $V \ni y$ が存在する。指示関数 $f_U$ は $U$ 上で $0$ を取るため $f_U \in I_{\mathcal{N}(x)}$ である。関数 $g = f_U + 1$ を考えると、これは $U$ で $1$、$X \smallsetminus U$ で $0$ を取る。$U \cap V = \varnothing \implies V \subset X \smallsetminus U$ であるから、$g$ は $V$ 上で $0$ を取る。ゆえに $g \in I_{\mathcal{N}(y)}$ である。ここで $f_U + g = f_U + (f_U + 1) = 2f_U + 1 = 1$($\mathbb{F}_2$ の演算より)となるため、$1 \in I_{\mathcal{N}(x)} + I_{\mathcal{N}(y)}$ が示された。
$(\impliedby)$ $1 = f + g$ となるような $f \in I_{\mathcal{N}(x)}, g \in I_{\mathcal{N}(y)}$ が存在すると仮定する。定義より、$x$ の開近傍 $U$ が存在して $U$ 上で $f = 0$ となり、$y$ の開近傍 $V$ が存在して $V$ 上で $g = 0$ となる。もし $U \cap V \neq \varnothing$ であり、ある点 $w \in U \cap V$ が存在したとすると、方程式より $1 = f(w) + g(w)$ となるが、$w$ は $U$ にも $V$ にも属するため $f(w) = 0$ かつ $g(w) = 0$ である。ゆえに $1 = 0 + 0 = 0$ となり矛盾が生じる。よって $U \cap V = \varnothing$ でなければならず、空間は Hausdorff である。
$(\implies)$ $X$ が正則空間であるとし、任意の閉集合 $F$ と $x \notin F$ を取る。定義より互いに素な開近傍 $U \ni x$ と $V \supset F$ が存在する。指示関数 $f_U$ は $U$ 上で $0$ となるため $f_U \in I_{\mathcal{N}(x)}$ である。関数 $g = f_U + 1$ を考えると、これは $X \smallsetminus U$ で $0$ となる。$U \cap V = \varnothing \implies V \subset X \smallsetminus U$ であるから、$g$ は開集合 $V$ 上で恒等的に $0$ となり、定義 1.3 より $g \in I_{\mathcal{N}(F)}$ である。$f_U + g = 1$ より $1 \in I_{\mathcal{N}(x)} + I_{\mathcal{N}(F)}$ となる。
$(\impliedby)$ $1 = f + g$ となるような $f \in I_{\mathcal{N}(x)}, g \in I_{\mathcal{N}(F)}$ が存在すると仮定する。定義より、$x$ の開近傍 $U$ が存在して $U$ 上で $f = 0$ となり、また $F$ を包含する開集合 $V \supset F$ が存在して $V$ 上で $g = 0$ となる。もし $U$ と $V$ が交わり、点 $w \in U \cap V$ が存在したとすると、$1 = f(w) + g(w) = 0 + 0 = 0$ となり矛盾。よって $U \cap V = \varnothing$。これにより $x$ と閉集合 $F$ が互いに素な開集合で分離され、正則性が示された。
$(\implies)$ $X$ が正規空間であるとし、任意の互いに素な閉集合 $F_1, F_2$ を取る。定義より互いに素な開近傍 $U \supset F_1$ と $V \supset F_2$ が存在する。指示関数 $f_U$ は $U$ 上で $0$ となるため $f_U \in I_{\mathcal{N}(F_1)}$ である。関数 $g = f_U + 1$ は $X \smallsetminus U$ で $0$ となるが、$U \cap V = \varnothing \implies V \subset X \smallsetminus U$ より、$g$ は $V$ 上で $0$ となる。したがって $g \in I_{\mathcal{N}(F_2)}$。$f_U + g = 1$ より $1 \in I_{\mathcal{N}(F_1)} + I_{\mathcal{N}(F_2)}$。
$(\impliedby)$ $1 = f + g$ となるような $f \in I_{\mathcal{N}(F_1)}, g \in I_{\mathcal{N}(F_2)}$ が存在すると仮定する。定義より、$F_1$ を包含する開集合 $U$ が存在して $U$ 上で $f = 0$ となり、$F_2$ を包含する開集合 $V$ が存在して $V$ 上で $g = 0$ となる。もし $U \cap V \neq \varnothing$ であり $w \in U \cap V$ が存在したとすると、$1 = f(w) + g(w) = 0 + 0 = 0$ となり矛盾。よって $U \cap V = \varnothing$ となり、互いに素な閉集合を互いに素な開集合で分離できたため、正規性が示された。
実数体 $\mathbb{R}$ への関数に対する Urysohn や Tietze の定理は、$\mathbb{F}_2$ への関数に対しては、位相空間が「強ゼロ次元」であることと同値になる。ここで $C(X, \mathbb{F}_2)$ は、$X$ から離散位相を入れた $\mathbb{F}_2$ への連続関数全体を表す。
(1 $\implies$ 2): 強ゼロ次元であれば、互いに素な閉集合 $F_1, F_2$ を分離する clopen 集合 $U$ が存在する。$U$ で $0$、$X \smallsetminus U$ で $1$ を取る指示関数 $f_U$ を構成する。逆像について $f_U^{-1}(0) = U$ は clopen なので開集合、$f_U^{-1}(1) = X \smallsetminus U$ も開集合となるため $f_U$ は連続関数としての条件を満たし、(2) が成立する。
(2 $\implies$ 1): (2) を満たす連続関数 $f$ が存在すれば、$U = f^{-1}(0)$ と置くと、$\mathbb{F}_2$ の各点は開かつ閉であるため、逆像 $U$ は $X$ における clopen 集合となる。$f$ の条件より $F_1 \subset U$ かつ $F_2 \subset f^{-1}(1) = X \smallsetminus U$ となるため、強ゼロ次元性が従う。
(2 $\implies$ 3): 閉集合 $F$ と $g \in C(F, \mathbb{F}_2)$ が与えられたとする。定義域 $F$ を持つ関数 $g$ の連続性より、$F_1 = g^{-1}(0)$ と $F_2 = g^{-1}(1)$ は部分空間 $F$ における閉集合である。ここで $F$ 自身が $X$ の閉集合であるため、$F_1, F_2$ は空間 $X$ 全体から見ても閉集合となる。また $F_1 \cap F_2 = \varnothing$ であるため、これらは $X$ における互いに素な閉集合である。(2) の条件よりこれらを $0$ と $1$ で分離する連続関数 $f \in C(X, \mathbb{F}_2)$ が存在する。この $f$ は $F_1$ 上で $0$、$F_2$ 上で $1$ を取るため、任意の $x \in F$ で $g(x)$ と完全に一致し、拡張関数となる。
(3 $\implies$ 2): 互いに素な閉集合 $F_1, F_2$ が与えられたとき、$F = F_1 \cup F_2$ は有限和なので閉集合である。$F_1$ 上で $0$、$F_2$ 上で $1$ を取る関数 $g \colon F \to \mathbb{F}_2$ を定義する。$g^{-1}(0) = F_1$、$g^{-1}(1) = F_2$ はそれぞれ $F$ の閉集合であり開集合でもあるため $g$ は連続である。(3) の仮定よりこれを拡張する連続関数 $f$ が存在し、(2) の条件を満たす。
これらの結果から、$T_1$ 分離公理および各点での連続関数の性質が、可換環 $\mathbb{F}_2^X$ におけるイデアルの代数的操作として余すところなく捉えられることがわかる。 空間 $X$ が強ゼロ次元かつコンパクトである場合(いわゆる Stone 空間)、環 $C(X, \mathbb{F}_2)$ の極大イデアルの空間に適切な位相(Stone 位相)を導入することで、元の空間 $X$ との間に完全な双対性が成立する(Stone の表現定理)。本稿での $\mathbb{F}_2^X$ の性質の翻訳は、この高度な代数幾何学的・圏論的対応を理解するための最も具体的かつ基礎的な第一歩である。
ここでは、特定の関数環にとどまらず、一般の可換環 $A$ のイデアルの集合 $\mathcal{I}$ を用いて $A$ に位相(線型位相)を導入する方法について解説する。このような位相は、代数幾何学や可換環論において完備化などを扱う際に非常に重要な役割を果たす。以下では、厳密な定義と位相環になることの完全な証明を与える。
まず、$\mathcal{O}$ が位相の公理を満たすことを示す。
条件より明らかに $\varnothing \in \mathcal{O}$ であり、任意の $x \in A$ と任意の $I \in \mathcal{I}$ に対して $x + I \subset A$ であるから $A \in \mathcal{O}$ である。
次に、$U, V \in \mathcal{O}$ とする。$x \in U \cap V$ を任意にとると、$U, V$ は開集合なので、ある $I, J \in \mathcal{I}$ が存在して $x + I \subset U$ かつ $x + J \subset V$ が成り立つ。条件 (F) により、ある $K \in \mathcal{I}$ が存在して $K \subset I \cap J$ を満たす。このとき、$x + K \subset (x + I) \cap (x + J) \subset U \cap V$ となるため、$U \cap V \in \mathcal{O}$ である。
さらに、$\{U_\lambda\}_{\lambda \in \Lambda}$ を $\mathcal{O}$ の任意の族とし、$W = \bigcup_{\lambda \in \Lambda} U_\lambda$ とおく。$x \in W$ をとると、ある $\lambda \in \Lambda$ が存在して $x \in U_\lambda$ となる。$U_\lambda \in \mathcal{O}$ であるから、ある $I \in \mathcal{I}$ が存在して $x + I \subset U_\lambda \subset W$ となる。よって $W \in \mathcal{O}$ である。以上により、$\mathcal{O}$ は $A$ 上の位相を定める。
次に、$x \in A$ と $I \in \mathcal{I}$ に対して $x + I \in \mathcal{O}$ であることを示す。$y \in x + I$ を任意にとる。このとき $y - x \in I$ であり、$I$ はイデアル(特に加法部分群)であるため、$y + I = (y - x) + x + I \subset x + I + I = x + I$ が成り立つ。よって、$y$ に対して $I \in \mathcal{I}$ 自身をとれば $y + I \subset x + I$ となるので、$x + I \in \mathcal{O}$ である。
まず、加法 $+ \colon A \times A \to A$ が連続であることを示す。$(x, y) \in A \times A$ を任意にとり、$x + y$ の任意の開近傍 $W$ をとる。開集合の定義より、ある $I \in \mathcal{I}$ が存在して $(x + y) + I \subset W$ となる。$A \times A$ における $(x, y)$ の近傍として $(x + I) \times (y + I)$ を考える。任意の $x' \in x + I$ と $y' \in y + I$ に対して、$x' = x + a$ および $y' = y + b$ (ただし $a, b \in I$ )と書ける。このとき $x' + y' = x + y + a + b$ である。$I$ はイデアルなので加法について閉じており、$a + b \in I$ である。したがって、$x' + y' \in (x + y) + I \subset W$ となる。よって加法は連続である。
次に、加法逆元をとる写像 $- \colon A \to A$ が連続であることを示す。$x \in A$ を任意にとり、$-x$ の任意の開近傍 $W$ をとる。ある $I \in \mathcal{I}$ が存在して $-x + I \subset W$ となる。$x$ の開近傍 $x + I$ を考えると、任意の $x' \in x + I$ は $x' = x + a$ ( $a \in I$ )と書ける。このとき $-x' = -x - a$ である。$I$ はイデアルなので $-a \in I$ であり、$-x' \in -x + I \subset W$ となる。よって加法逆元の写像は連続である。
最後に、乗法 $\cdot \colon A \times A \to A$ が連続であることを示す。$(x, y) \in A \times A$ を任意にとり、$xy$ の任意の開近傍 $W$ をとる。ある $I \in \mathcal{I}$ が存在して $xy + I \subset W$ となる。$(x, y)$ の近傍として $(x + I) \times (y + I)$ を考える。任意の $x' \in x + I$ と $y' \in y + I$ をとると、$x' = x + a$ および $y' = y + b$ ( $a, b \in I$ )と書ける。このとき、$x' y' = (x + a)(y + b) = xy + xb + ya + ab$ と展開される。$I$ は $A$ のイデアルであるため、$A$ の元との積について閉じており $xb \in I$ かつ $ya \in I$ である。また、$I$ 自身の元の積も $I$ に含まれるため $ab \in I$ である。これらはすべて $I$ の元であるから、その和 $xb + ya + ab \in I$ となる。したがって $x' y' \in xy + I \subset W$ が成り立つ。よって乗法も連続である。以上により、$A$ は位相環である。
まず、$A$ が Hausdorff 空間であると仮定し、$\bigcap_{I \in \mathcal{I}} I = \{0\}$ を示す。$x \in A$ を $x \neq 0$ なる任意の元とする。$A$ は Hausdorff であるため、$0$ と $x$ を分離する開近傍 $U, V$ が存在する。すなわち、$0 \in U$ 、$x \in V$ かつ $U \cap V = \varnothing$ を満たす。開集合の定義より、ある $I \in \mathcal{I}$ が存在して $I = 0 + I \subset U$ となり、ある $J \in \mathcal{I}$ が存在して $x + J \subset V$ となる。$U \cap V = \varnothing$ であるため、$I \cap (x + J) = \varnothing$ が成り立つ。ここで、$0 \in J$ であるため $x \in x + J$ である。もし $x \in I$ であるとすると、$x \in I \cap (x + J)$ となり空集合であることに矛盾する。したがって $x \notin I$ である。これにより $x \notin \bigcap_{I \in \mathcal{I}} I$ が示された。よって $\bigcap_{I \in \mathcal{I}} I = \{0\}$ である。
逆に、$\bigcap_{I \in \mathcal{I}} I = \{0\}$ であると仮定し、$A$ が Hausdorff 空間であることを示す。$x, y \in A$ を $x \neq y$ なる任意の 2 元とする。$x - y \neq 0$ であるため、仮定よりある $I \in \mathcal{I}$ が存在して $x - y \notin I$ を満たす。この $I$ を用いて、$x$ の開近傍 $x + I$ と $y$ の開近傍 $y + I$ を考える。もし $(x + I) \cap (y + I) \neq \varnothing$ であるとすると、ある $z \in A$ が存在して $z = x + a = y + b$ ( $a, b \in I$ )と書ける。このとき、$x - y = b - a$ となるが、$I$ はイデアルなので $b - a \in I$ であり、$x - y \in I$ となって矛盾する。したがって $(x + I) \cap (y + I) = \varnothing$ である。異なる 2 点を交わらない開近傍で分離できたため、$A$ は Hausdorff 空間である。